実在の書物に案をとった歴史小説です。
1973年に刊行され、いったんは絶版したものの、本書に感銘を受けた全国の学校の数学教師たちの熱意ある運動で2006年にめでたく復刊されたという経緯があります。
舞台は江戸時代、久留米藩下の貧しい下町。
医者で算法家(=数学者)の父親をもつ聡明な少女あきが、ふとしたきっかけでお侍の計算ミスを指摘、それを知った数学好きのお殿さまに才覚を認められ、お城に雇い上げられる話がもちあがります。
ところが、あきの父親がメジャーな流派「関流」とは異なる学歴をもつせいで横槍が入り、厄介な勝負を課せられることに。
試験の場に送り込まれてきたのは、関流が推すもうひとりの算法少女。果たして、あきの行く末やいかに……というお話。
お城がらみの縦軸に対する横糸として、読み書き九九のできない子供たちにあきが算法を教えてやったり、西洋の数学書をみてショックを受けたり、あきが自分の名義で算法についての参考書「算法少女」を出版したりというエピソード群がからみこんできて、江戸時代にあって一人の女の子がひらかれた学問の目をもつまでの成長譚になっています。
父親は算法を「壷中の天(世俗から切り離した自分ひとりのマニア的楽しみ)」としてとらえ、母親は算法をお金になるかどうかで貶めたり褒めたりする。
それに対して、主人公あきは「わたしはお父さんともお母さんとも意見が違う、算法はもっと別の何かのためにあると思う」と心中でつぶやき、自分なりの算法の活かし方を求めていく姿が熱いです。
いわゆるジュニア小説なのでそんなに小難しい内容でもなく、するすると読めます。
考えてみれば芸事だから当然なんですが、数学にも流派とか派閥争いが存在して、日本の歴史にもそれがあったんだよなーという勉強になりました。
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